STORY

「庭から摘んだ、着飾らない花」

「庭から摘んだ、着飾らない花」
そのなんでもない光景が、私の記憶に強く残っています。

それは、東京藝術大学デザイン科を出て、ロンドンの大学院に在学していた約5年前のこと。

私が植物の世界へ足を踏み入れたころの話です。

 

それまでの私は 小さいころからモノづくりが好きで、 高校は進学校に進んだものの 一生仕事にするならと決心し、藝大へ。
高校のときに一番好きだった科目は地学、 思い返せば大学の制作でも「植物」に縁のある伏線はあったのですが、 はっきりとその道を進むきっかけとなったのは大学院修了制作のテーマに選んだことでした。

 

自然が作り出す ため息の出るような圧倒的な美しさ。植物に学ぶことで 自分の頭が生み出せるモノの、その先のクリエイティビティを見られるんじゃないか。私はそんな師匠を見つけた気持ちでした。
修了制作に向けて、植物のプロに話を聞きに行ったり、独学で学びながら新しいデザインの表現を探しましたが 小手先でなんとかなるテーマではありません。

壮大なテーマを前に、2年目のロンドンで それまでの人生で一番行き詰まった時期を過ごしました。 夜遅くまで学校に残り 心身疲れ果てて帰宅した夜、 玄関の暗がりの中、ランプの優しい光に照らされた花が目に入りました。

 

ガーデニング好きの大家さんが、庭から摘んで生けた花。 おかえり、と やさしく出迎えてくれた花に 込み上げるものがありました。

私たちは小難しく考え悩んだりして 頭でっかちになることもありますが、植物たちは純粋に「生きる美しさ」を見せてくれる存在です。

 

花は生活必需品ではありません。
家に花や植物がなくても死なないし、 「それって必要?」と思われる方には 今はまだ必要のないものかもしれません。 疲れて気持ちがふさいだとき、 立ち止まりそうになったとき、 はじめて「あるといいな」と気づけるもの、 なのかもしれません。

今回JEWEL CAFEでお伝えさせて頂いたのは、 お花や植物を「自由に楽しむ」エッセンス。

私が日常とデザインの視点で 花や植物とむきあって大切にしていることです。 特別なアレンジメントや、 いけばな流でもありません。

たとえば今回私が嬉しかったシーンは、みなさんに一本のクルクマをいけてもらったときのこと。 花器は家にあるようなグラスや瓶ですし、参加者の皆さんはいわゆるお花好きな一般の方です。 「どんなことを考えたり、こだわりましたか?」 と質問し、 想いを話して頂きながらひとつずつ丁寧に見ていきました。

文字通り十人十色で どれも正解。

たった一本が、それぞれの想いに沿ってちょっとずつ違ういけ方をされていました。

そういう見方や表現を大切にします。

お花をバランスよくいけられるポイントや 観葉植物のお手入れの方法も、 もちろん知識としてお伝えしますが、 あくまで心地よく楽しむためであって 息苦しいルールでも型でもありません。 参加者の方々が 純粋に楽しんで受けとってくださる方ばかりで とても心地よかったです。

ありがとうございました。

人々が植物の魅力をどんどん知って、好きになって 思い思いに飾り 植物に心がふわ〜っと癒されるような日常が 世界中に広がっていくといいなと 思っております。

私自身、植物の世界に毎日発見ばかりですので これからも、季節ごとやテーマを変えて お伝えしていければ嬉しいです。

植物の魅力伝道師より。

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フラワーアーティスト
       尾形 朋美
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